ぬる速ヘッドライン
川 ゚ -゚) クーは異境の地で暮らすようです
川 ゚ -゚) クーは異境の地で暮らすようですpart2
83 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:12:11.20 ID:yHTahav10
※
ドクオの案内で街を歩く。
屋台や出店であふれかえった大通りを抜けて、ちょっと格調の高い造りの店についた。
('A`)「紅茶はよく知らないんだけど、ここなら揃ってたはず」
川 ゚ -゚)「すまんな、手間をかけて。コーヒーの香りがどうも苦手で」
('A`)「気にしないで。俺も『本当の紅茶』に興味あるし」
中に入ると、高級な食器やティーセットがずらりと並んでいた。
角のコーナーにさまざまな種類の紅茶や中国茶などが揃っていた。
('A`)「本当は食器の店なんだけど、オーナーがお茶好きなんだ」
川 ゚ -゚)「なるほど」
確かに、専門店に劣らない品揃え。
好きでなければここまではしないだろう。
それにしても高い。
84 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:14:17.29 ID:yHTahav10
私の目が値札に釘付けになっていると、ドクオが私の肩を指でつついた。
('A`)「お金なら心配しないで」
川 ゚ -゚)「いや、そうもいかんだろう」
('A`)「それ欲しいんでしょ?遠慮はいらないから」
川 ゚ -゚)「しかし高いぞ」
('A`)「それ買えば『本当の紅茶』が飲めるんだよね?」
川 ゚ -゚)「まあそれはそうだが……」
ドクオは私の手から茶葉とセットをひったくって、
さっさと会計を済ませた。
店を出て先程の雑踏に潜りこむ。
先程の出費を取り返すように、ドクオは日用品を値切りまくっていた。
帰り道、ドクオは財布の中を三回も覗いた。
そのたびにこっそりため息をついていた。
86 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:16:14.80 ID:yHTahav10
※
翌朝、ドクオが仕事に出かけた。
もちろん、ちゃんとした紅茶と朝食を作ってやった。
彼は子供のように喜んでいた。
無用心だから、という理由でドクオはTVをつけっぱなしにしていったが
私にTVを見る習慣がないので退屈した。
ふと本棚を見ると、何やら日本語のマンガが並んでいた。
日に焼けて黄ばんだものと真新しいものが乱雑に詰めてある。
川 ゚ -゚)「マンガばっかりだな……」
とりあえず乱雑な並びをきちんと整理した。
当初の並び順や作者名などを考慮し、
それでも綺麗に見えるように何とか片付けた。
片付けたあと、つい食事もとらずに読みふけってしまった。
89 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:18:12.30 ID:yHTahav10
やがて陽が落ち、ドクオが帰ってきた。
('A`)「お、気に入った?それ」
川 ゚ -゚)「あまりマンガは読んだ事がなかったが、
なかなか面白いものだな」
('A`)「職場の友達が日本のマンガが好きでさ。
俺の本棚が第二書庫にされつつあるんだ」
川;゚ -゚)「ありがたいんだかひどいんだかわからんな」
('A`)「まあ微妙なとこだよね」
川 ゚ -゚)「とくにこれが気に入った」
('A`)「え、『寄生獣』が?」
川 ゚ -゚)「うむ」
”死んだ犬は犬じゃない、犬の形をしたゴミ”
感動的なフレーズではないが、何故か心に残った。
それにしても食欲のなくなる話だ……
96 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:23:53.40 ID:yHTahav10
('A`)「ねえクー、お腹すいてない?」
川 ゚ -゚)「昼食抜きだし、本当はすいてるはずなんだが……
案外食べ始めれば食べられるかもしれんな」
('A`)「今日はちょっと外食しようと思うんだ」
川 ゚ -゚)「……」
昨日三回も財布を覗いていたのは誰だったかな……
本当に大丈夫なのか?
私がそれを口にすると、ドクオは胸を叩いた。
痩せ気味の彼がそれをやっても貫禄がない。
('A`)「おいしいもの食べたくない?」
川 ゚ -゚)「食べたくないといえば嘘になるが……」
('A`)「じゃあ行くよ。つか遠慮なんかしないで素直に返答してくれるとうれしい」
川 ゚ -゚)「わかった」
ドクオは私の手を取ろうとして、何故か握るのをやめた。
彼は目をそらし、無言で玄関に向かった。
私も無言でドクオの後をついて行く。
97 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:26:05.56 ID:yHTahav10
※
昨日の雑踏と違い、やや小奇麗な区画に出た。
聞けば、この先に高級住宅街かあるとのこと。
貧富の差が激しいこの島にしては珍しく、そこそこの街並み。
悪く言えばこの島らしからぬ、中途半端な風景。
歩いていると、ちょっと古めのビルに着いた。
ドクオがドアを開けると、階段が地下へと伸びている。
('A`)「ちょっと隠れ家っぽくて良くない?」
川 ゚ -゚)「まあな。この地下で食事を?」
('A`)「そうそう。来ればわかるから」
古びた、それでいて丁寧に手入れをされた手すりをつたって
私達は階段を降りていった。
101 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:28:10.38 ID:yHTahav10
降りた先はいかにも高級そうなレストランだった。
中に入ると、ウェイトレスが挨拶をしてきた。
(゚、゚トソン「いらっしゃいませ、ご予約は?」
('A`)「『シャトリナ姐さん』に昼間電話した者なんだけど。
づーの所のドクオが来た、って伝えてもらえるかな?」
(゚、゚トソン「オーナーのお知り合いでいらっしゃいますか?
ご案内いたしますので席に着いてお待ちください」
ウェイトレスに従って奥の席に進んでいく。
途中、ステージとグランドピアノを見つける。
椅子もテーブルも年代物だ。
私は小声でドクオに耳打ちした。
川 ゚ -゚)「なあ、大丈夫なのか?」
('A`)「ん?」
川 ゚ -゚)「こんな高級店で食事なんかして」
('A`)「ああ、その辺は大丈夫。それよりこのお店どうよ?」
102 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:30:07.01 ID:yHTahav10
小声で話すうちに、案内された席に着いた。
川 ゚ -゚)「どうって……財布が心配だ」
('A`)「そうじゃなくてさ、ふいんきとかその辺」
川 ゚ -゚)「いい店だと思うぞ、落ち着くし」
('A`)「気に入ってくれた?」
川 ゚ -゚)「まあな。金の事さえ考えなければ」
ドクオがふと私の後側に視線を向けた。
('A`)「お、来た来た」
ペイズリーの派手な柄を基調にしながらも落ち着いた感じにまとめた、
センスのある中年の女性がこちらにやってきた。
ここよりもっと南の、マレーシアかインドネシアあたりの顔立ち。
数々の派手なアクセサリーをつけながらも下品さが漂わないあたり、
ファッションに興味のある人間であれば学ぶ点も多かろう。
103 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:32:08.31 ID:yHTahav10
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「あ〜らドックン、久しぶりじゃないの〜」
川 ゚ -゚)「……ドックン?」
(;'A`)「やめて下さいよシャトリナ姐さん。
俺だってもうガキじゃないんすよ」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「あら、いくつになってもドックンはドックンじゃないのよ〜」
(#'A`)「じゃあ今度から俺も、シャトリナ”おばさん”って言いますよ」
ドクオが言い放つと、シャトリナさんとやらの表情が一変した。
//ヽヽ
彡#゚ー゚)「……で、何の用?ドクオ君」
('A`)「失礼しました姐さん。ちょいとお願いが……」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「お願いはいいけど先にその娘さんを紹介しなさいよ。
やっと彼女出来たんでしょ?」
(*'A`)「いや彼女とかそういうんじゃなくて――」
105 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:34:14.02 ID:yHTahav10
何故か照れるドクオの顔を一瞥すると、
彼女は呆れ顔でドクオの発言をさえぎった。
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「相変わらずドンパチ以外はパッとしない子なんだから。
お嬢さん、あたしはここのオーナーでシャトリナと言います。
ドクオ君の親戚みたいなもの。よろしくお願いね〜」
('A`)「え、親戚?」
あれ、家族には縁がないようなことを言ってたような……
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「血は繋がってないけど似たようなもんでしょ?
あんたはづー姐さんの養子みたいなもんなんだから」
川 ゚ -゚)「???」
づー姐さん?
何だか話が全く見えない。
('A`)「ちょっと姐さん、クーが混乱してるじゃんか」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「あら、クーさんっておっしゃるの?」
シャトリナさんがこちらに向かって微笑んだ。
今でも十分綺麗だと思うが、若い頃は相当のものだったんだろう。
しかし、話は相変わらずまったく見えない。
108 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:36:03.40 ID:yHTahav10
('A`)「ちょっと黙ってて。クーに説明するから」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「今頃説明?ほんとに段取り悪い子なんだから」
ドクオはシャトリナさんを無視して私に話しかけてきた。
('A`)「俺の母親がガキのころに失踪した件は話したよね?」
川 ゚ -゚)「ああ」
ウェイターが慌てて持って来た椅子に、シャトリナさんが腰掛けた。
出来が悪い我が子を慈しむような眼差しで、ドクオの方を見ている。
('A`)「ガキの俺を拾ってくれたのがづーって婆さんでさ。
シャトリナ姐さんは婆さんの友達なんだ」
シャトリナさんが話に割り込んで来た。
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「あたしが若い頃から、づー姐さんには本当にいろいろ世話になったのよ〜
づー姐さんはあたしをね、まるで娘か姪みたいに可愛がってくれたの。
その姐さんの……養子ってより養孫?ならあたしの甥みたいなもんでしょ?」
('A`)「まあ、そんな感じかもね」
111 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:38:08.46 ID:yHTahav10
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「クーさんは見たことあるかしら?この子こう見えて強いのよ〜
づー姐さんの最後の、最強の弟子だもんねドックンは」
川 ゚ -゚)「はい。実は彼に助けてもらいまして」
(#'A`)「……またドックン言ってますよ、シャトリナ”おばさん”」
ドクオが拗ねた。
やはり(キモ)かわいい。
//ヽヽ
彡#゚ー゚)「そうだったかしらドクオ君」
(#'A`)「……それでですね、ご相談なんですけど」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「そうそう、あんた本当にトロいわね。結局何の用なのよ?」
いや、ドクオのせいじゃないと思うが……
ほんの少しドクオに同情した。
でも、こんな身内がいるのをうらやましいとも思えた。
116 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:40:12.14 ID:yHTahav10
('A`)「この店、人手足りてますかね?」
なるほど、そういうことか。
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「え?いきなり何よ」
('A`)「実は仕事探してるんですよ」
//ヽヽ
彡;゚ー゚)「……まさかあんた警察辞めちゃったの?」
川 ゚ -゚)「いえ、職を探してるのは私です」
('A`)「クーはこの島に来てまだ日が浅くてさ。
信用できる職場って考えて、思いついたのがここなんだ」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「なるほどねえ〜。で、宿は?」
('A`)「今のところ俺と住んでるけど、そっちも探さないと」
//ヽヽ
彡*゚ー゚)「ふーん」
シャトリナさんが私とドクオを交互に見た。
上品な女性が、下品に顔をにやつかせた。
117 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:42:04.35 ID:yHTahav10
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「……よろしい、三日ちょうだいな。四日後から働いてもらいます。
店の二階の空き部屋も三日以内に整理しておくわ」
川 ゚ -゚)「ありがとうございます」
('A`)「さすが姐さん、助かったよ」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「じゃあ、あたしの椅子も来ちゃったことだし三人で食べましょ。
今日はあたしの奢りだから、遠慮しないで高いお酒でもいいわよ」
川 ゚ -゚)「色々とすみません」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「だ〜か〜ら〜!今日はまだあなた達はあたしの客。
……四日後からは厳しいわよ。覚悟は出来てる?」
川 ゚ -゚)「はい、よろしくお願いします」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「は〜い、大変いい返事。じゃあガンガン飲みましょ〜」
('A`)「姐さん、悪いね」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「何遠慮してるのよ、可愛くないわね」
シャトリナさんが微笑むと、頼んでもないのに前菜と食前酒がやってきた。
フレンチをベースに、どことなくエスニックなメニューが並ぶ。
強いはずの刺激をフレンチの技法が優しく包んだ、初めて食べる味。
122 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:45:09.05 ID:yHTahav10
こちらが質問をする前に、シャトリナさんが話しかけてきた。
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「もともとはちゃんとしたフレンチのお店だったの。
でもこっちの方が人気が出ちゃったのよ〜
実はあたしがインドネシア、シェフがタイ出身でね」
川 ゚ -゚)「ほほう」
//ヽヽ
彡*゚ー゚)「うちはけっこうお金持ちのお客様が多くてね。
本格フレンチはよその国でも食べられるけど、
この味はうちでしか味わえないって」
川 ゚ -゚)「そういうものかもしれませんね」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「だから一応、二種類メニューがあるのよ〜
それぞれに合うワインが全然違うのが悩みどころなんだけど。
覚えておいてね、クーちゃん」
いきなり「ちゃん」付けされてもまったく腹が立たない。
やはり人徳なのだろう。
川 ゚ -゚)「わかりました」
123 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:47:13.35 ID:yHTahav10
私達の会話をよそに、ドクオはあっという間に食前酒を飲み干した。
勝手にワインを注文し、また飲み干す。
(*'A`)「いや〜、美味い酒っすね姐さん」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「……」
川 ゚ -゚)「……」
(*'A`)「え、とりあえず今日は飲むんでしょ?」
すでに出来上がっている様子。
とりたてて酒に強いわけではないらしい。
//ヽヽ
彡#゚ー゚)「そんなんだからモテないのよあんたは」
(;'A`)「すみません」
そうなのか?
かわいいと思うんだがな。
……まあ、「キモ」が前に付くのは否定できないが。
予想通り、ドクオはあっさりと潰れた。
125 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:49:14.33 ID:yHTahav10
※
酔い覚ましもかねて、二人で歩いて帰った。
泥酔したドクオに肩を貸し、とぼとぼと夜道を歩く。
川沿いの道を通りがかったとき、心地よい風が頬を通り抜けた。
やがて橋に差し掛かったとき、人影が見えた。
人影の手に銀色の光がきらめく。
……すっかり忘れていた。
夜道を歩くには物騒すぎる島。
ふと、肩が軽くなった。
泥酔していたはずのドクオがすっと立った。
私をかばうように進み、人影と向き合う。
('A`)「すぐ終わるからちょっと下がってて」
130 名前:VIPがお送りします。 :2007/06/28(木) 21:51:05.71 ID:yHTahav10
私が後ろに退いたのを確認すると、ドクオの表情が一変した。
昨日見た、獣の目になった。
彼は人影と向き合い、じりじりと距離を縮めていく。
ドクオは人影に向かって駆け出す。
相手の持った凶刃を蹴り上げた。
刃は一度宙に舞うと、地面に落ちて高い音を響かせた。
はっとしてドクオの方に視線を移すと、そこにはドクオ一人しかいなかった。
どうやったのか見落としたが、人影は川に落ちてもがいている。
('A`)「ね?だから夜道は一人で歩いちゃダメなんだよ」
言い終えるとドクオは元の酔っ払いに戻った。
続く 川 ゚ -゚) クーは異境の地で暮らすようですpart4
川 ゚ -゚) クーは異境の地で暮らすようですpart2
※
ドクオの案内で街を歩く。
屋台や出店であふれかえった大通りを抜けて、ちょっと格調の高い造りの店についた。
('A`)「紅茶はよく知らないんだけど、ここなら揃ってたはず」
川 ゚ -゚)「すまんな、手間をかけて。コーヒーの香りがどうも苦手で」
('A`)「気にしないで。俺も『本当の紅茶』に興味あるし」
中に入ると、高級な食器やティーセットがずらりと並んでいた。
角のコーナーにさまざまな種類の紅茶や中国茶などが揃っていた。
('A`)「本当は食器の店なんだけど、オーナーがお茶好きなんだ」
川 ゚ -゚)「なるほど」
確かに、専門店に劣らない品揃え。
好きでなければここまではしないだろう。
それにしても高い。
私の目が値札に釘付けになっていると、ドクオが私の肩を指でつついた。
('A`)「お金なら心配しないで」
川 ゚ -゚)「いや、そうもいかんだろう」
('A`)「それ欲しいんでしょ?遠慮はいらないから」
川 ゚ -゚)「しかし高いぞ」
('A`)「それ買えば『本当の紅茶』が飲めるんだよね?」
川 ゚ -゚)「まあそれはそうだが……」
ドクオは私の手から茶葉とセットをひったくって、
さっさと会計を済ませた。
店を出て先程の雑踏に潜りこむ。
先程の出費を取り返すように、ドクオは日用品を値切りまくっていた。
帰り道、ドクオは財布の中を三回も覗いた。
そのたびにこっそりため息をついていた。
※
翌朝、ドクオが仕事に出かけた。
もちろん、ちゃんとした紅茶と朝食を作ってやった。
彼は子供のように喜んでいた。
無用心だから、という理由でドクオはTVをつけっぱなしにしていったが
私にTVを見る習慣がないので退屈した。
ふと本棚を見ると、何やら日本語のマンガが並んでいた。
日に焼けて黄ばんだものと真新しいものが乱雑に詰めてある。
川 ゚ -゚)「マンガばっかりだな……」
とりあえず乱雑な並びをきちんと整理した。
当初の並び順や作者名などを考慮し、
それでも綺麗に見えるように何とか片付けた。
片付けたあと、つい食事もとらずに読みふけってしまった。
やがて陽が落ち、ドクオが帰ってきた。
('A`)「お、気に入った?それ」
川 ゚ -゚)「あまりマンガは読んだ事がなかったが、
なかなか面白いものだな」
('A`)「職場の友達が日本のマンガが好きでさ。
俺の本棚が第二書庫にされつつあるんだ」
川;゚ -゚)「ありがたいんだかひどいんだかわからんな」
('A`)「まあ微妙なとこだよね」
川 ゚ -゚)「とくにこれが気に入った」
('A`)「え、『寄生獣』が?」
川 ゚ -゚)「うむ」
”死んだ犬は犬じゃない、犬の形をしたゴミ”
感動的なフレーズではないが、何故か心に残った。
それにしても食欲のなくなる話だ……
('A`)「ねえクー、お腹すいてない?」
川 ゚ -゚)「昼食抜きだし、本当はすいてるはずなんだが……
案外食べ始めれば食べられるかもしれんな」
('A`)「今日はちょっと外食しようと思うんだ」
川 ゚ -゚)「……」
昨日三回も財布を覗いていたのは誰だったかな……
本当に大丈夫なのか?
私がそれを口にすると、ドクオは胸を叩いた。
痩せ気味の彼がそれをやっても貫禄がない。
('A`)「おいしいもの食べたくない?」
川 ゚ -゚)「食べたくないといえば嘘になるが……」
('A`)「じゃあ行くよ。つか遠慮なんかしないで素直に返答してくれるとうれしい」
川 ゚ -゚)「わかった」
ドクオは私の手を取ろうとして、何故か握るのをやめた。
彼は目をそらし、無言で玄関に向かった。
私も無言でドクオの後をついて行く。
※
昨日の雑踏と違い、やや小奇麗な区画に出た。
聞けば、この先に高級住宅街かあるとのこと。
貧富の差が激しいこの島にしては珍しく、そこそこの街並み。
悪く言えばこの島らしからぬ、中途半端な風景。
歩いていると、ちょっと古めのビルに着いた。
ドクオがドアを開けると、階段が地下へと伸びている。
('A`)「ちょっと隠れ家っぽくて良くない?」
川 ゚ -゚)「まあな。この地下で食事を?」
('A`)「そうそう。来ればわかるから」
古びた、それでいて丁寧に手入れをされた手すりをつたって
私達は階段を降りていった。
降りた先はいかにも高級そうなレストランだった。
中に入ると、ウェイトレスが挨拶をしてきた。
(゚、゚トソン「いらっしゃいませ、ご予約は?」
('A`)「『シャトリナ姐さん』に昼間電話した者なんだけど。
づーの所のドクオが来た、って伝えてもらえるかな?」
(゚、゚トソン「オーナーのお知り合いでいらっしゃいますか?
ご案内いたしますので席に着いてお待ちください」
ウェイトレスに従って奥の席に進んでいく。
途中、ステージとグランドピアノを見つける。
椅子もテーブルも年代物だ。
私は小声でドクオに耳打ちした。
川 ゚ -゚)「なあ、大丈夫なのか?」
('A`)「ん?」
川 ゚ -゚)「こんな高級店で食事なんかして」
('A`)「ああ、その辺は大丈夫。それよりこのお店どうよ?」
小声で話すうちに、案内された席に着いた。
川 ゚ -゚)「どうって……財布が心配だ」
('A`)「そうじゃなくてさ、ふいんきとかその辺」
川 ゚ -゚)「いい店だと思うぞ、落ち着くし」
('A`)「気に入ってくれた?」
川 ゚ -゚)「まあな。金の事さえ考えなければ」
ドクオがふと私の後側に視線を向けた。
('A`)「お、来た来た」
ペイズリーの派手な柄を基調にしながらも落ち着いた感じにまとめた、
センスのある中年の女性がこちらにやってきた。
ここよりもっと南の、マレーシアかインドネシアあたりの顔立ち。
数々の派手なアクセサリーをつけながらも下品さが漂わないあたり、
ファッションに興味のある人間であれば学ぶ点も多かろう。
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「あ〜らドックン、久しぶりじゃないの〜」
川 ゚ -゚)「……ドックン?」
(;'A`)「やめて下さいよシャトリナ姐さん。
俺だってもうガキじゃないんすよ」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「あら、いくつになってもドックンはドックンじゃないのよ〜」
(#'A`)「じゃあ今度から俺も、シャトリナ”おばさん”って言いますよ」
ドクオが言い放つと、シャトリナさんとやらの表情が一変した。
//ヽヽ
彡#゚ー゚)「……で、何の用?ドクオ君」
('A`)「失礼しました姐さん。ちょいとお願いが……」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「お願いはいいけど先にその娘さんを紹介しなさいよ。
やっと彼女出来たんでしょ?」
(*'A`)「いや彼女とかそういうんじゃなくて――」
何故か照れるドクオの顔を一瞥すると、
彼女は呆れ顔でドクオの発言をさえぎった。
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「相変わらずドンパチ以外はパッとしない子なんだから。
お嬢さん、あたしはここのオーナーでシャトリナと言います。
ドクオ君の親戚みたいなもの。よろしくお願いね〜」
('A`)「え、親戚?」
あれ、家族には縁がないようなことを言ってたような……
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「血は繋がってないけど似たようなもんでしょ?
あんたはづー姐さんの養子みたいなもんなんだから」
川 ゚ -゚)「???」
づー姐さん?
何だか話が全く見えない。
('A`)「ちょっと姐さん、クーが混乱してるじゃんか」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「あら、クーさんっておっしゃるの?」
シャトリナさんがこちらに向かって微笑んだ。
今でも十分綺麗だと思うが、若い頃は相当のものだったんだろう。
しかし、話は相変わらずまったく見えない。
('A`)「ちょっと黙ってて。クーに説明するから」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「今頃説明?ほんとに段取り悪い子なんだから」
ドクオはシャトリナさんを無視して私に話しかけてきた。
('A`)「俺の母親がガキのころに失踪した件は話したよね?」
川 ゚ -゚)「ああ」
ウェイターが慌てて持って来た椅子に、シャトリナさんが腰掛けた。
出来が悪い我が子を慈しむような眼差しで、ドクオの方を見ている。
('A`)「ガキの俺を拾ってくれたのがづーって婆さんでさ。
シャトリナ姐さんは婆さんの友達なんだ」
シャトリナさんが話に割り込んで来た。
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「あたしが若い頃から、づー姐さんには本当にいろいろ世話になったのよ〜
づー姐さんはあたしをね、まるで娘か姪みたいに可愛がってくれたの。
その姐さんの……養子ってより養孫?ならあたしの甥みたいなもんでしょ?」
('A`)「まあ、そんな感じかもね」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「クーさんは見たことあるかしら?この子こう見えて強いのよ〜
づー姐さんの最後の、最強の弟子だもんねドックンは」
川 ゚ -゚)「はい。実は彼に助けてもらいまして」
(#'A`)「……またドックン言ってますよ、シャトリナ”おばさん”」
ドクオが拗ねた。
やはり(キモ)かわいい。
//ヽヽ
彡#゚ー゚)「そうだったかしらドクオ君」
(#'A`)「……それでですね、ご相談なんですけど」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「そうそう、あんた本当にトロいわね。結局何の用なのよ?」
いや、ドクオのせいじゃないと思うが……
ほんの少しドクオに同情した。
でも、こんな身内がいるのをうらやましいとも思えた。
('A`)「この店、人手足りてますかね?」
なるほど、そういうことか。
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「え?いきなり何よ」
('A`)「実は仕事探してるんですよ」
//ヽヽ
彡;゚ー゚)「……まさかあんた警察辞めちゃったの?」
川 ゚ -゚)「いえ、職を探してるのは私です」
('A`)「クーはこの島に来てまだ日が浅くてさ。
信用できる職場って考えて、思いついたのがここなんだ」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「なるほどねえ〜。で、宿は?」
('A`)「今のところ俺と住んでるけど、そっちも探さないと」
//ヽヽ
彡*゚ー゚)「ふーん」
シャトリナさんが私とドクオを交互に見た。
上品な女性が、下品に顔をにやつかせた。
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「……よろしい、三日ちょうだいな。四日後から働いてもらいます。
店の二階の空き部屋も三日以内に整理しておくわ」
川 ゚ -゚)「ありがとうございます」
('A`)「さすが姐さん、助かったよ」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「じゃあ、あたしの椅子も来ちゃったことだし三人で食べましょ。
今日はあたしの奢りだから、遠慮しないで高いお酒でもいいわよ」
川 ゚ -゚)「色々とすみません」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「だ〜か〜ら〜!今日はまだあなた達はあたしの客。
……四日後からは厳しいわよ。覚悟は出来てる?」
川 ゚ -゚)「はい、よろしくお願いします」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「は〜い、大変いい返事。じゃあガンガン飲みましょ〜」
('A`)「姐さん、悪いね」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「何遠慮してるのよ、可愛くないわね」
シャトリナさんが微笑むと、頼んでもないのに前菜と食前酒がやってきた。
フレンチをベースに、どことなくエスニックなメニューが並ぶ。
強いはずの刺激をフレンチの技法が優しく包んだ、初めて食べる味。
こちらが質問をする前に、シャトリナさんが話しかけてきた。
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「もともとはちゃんとしたフレンチのお店だったの。
でもこっちの方が人気が出ちゃったのよ〜
実はあたしがインドネシア、シェフがタイ出身でね」
川 ゚ -゚)「ほほう」
//ヽヽ
彡*゚ー゚)「うちはけっこうお金持ちのお客様が多くてね。
本格フレンチはよその国でも食べられるけど、
この味はうちでしか味わえないって」
川 ゚ -゚)「そういうものかもしれませんね」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「だから一応、二種類メニューがあるのよ〜
それぞれに合うワインが全然違うのが悩みどころなんだけど。
覚えておいてね、クーちゃん」
いきなり「ちゃん」付けされてもまったく腹が立たない。
やはり人徳なのだろう。
川 ゚ -゚)「わかりました」
私達の会話をよそに、ドクオはあっという間に食前酒を飲み干した。
勝手にワインを注文し、また飲み干す。
(*'A`)「いや〜、美味い酒っすね姐さん」
//ヽヽ
彡 ゚ー゚)「……」
川 ゚ -゚)「……」
(*'A`)「え、とりあえず今日は飲むんでしょ?」
すでに出来上がっている様子。
とりたてて酒に強いわけではないらしい。
//ヽヽ
彡#゚ー゚)「そんなんだからモテないのよあんたは」
(;'A`)「すみません」
そうなのか?
かわいいと思うんだがな。
……まあ、「キモ」が前に付くのは否定できないが。
予想通り、ドクオはあっさりと潰れた。
※
酔い覚ましもかねて、二人で歩いて帰った。
泥酔したドクオに肩を貸し、とぼとぼと夜道を歩く。
川沿いの道を通りがかったとき、心地よい風が頬を通り抜けた。
やがて橋に差し掛かったとき、人影が見えた。
人影の手に銀色の光がきらめく。
……すっかり忘れていた。
夜道を歩くには物騒すぎる島。
ふと、肩が軽くなった。
泥酔していたはずのドクオがすっと立った。
私をかばうように進み、人影と向き合う。
('A`)「すぐ終わるからちょっと下がってて」
私が後ろに退いたのを確認すると、ドクオの表情が一変した。
昨日見た、獣の目になった。
彼は人影と向き合い、じりじりと距離を縮めていく。
ドクオは人影に向かって駆け出す。
相手の持った凶刃を蹴り上げた。
刃は一度宙に舞うと、地面に落ちて高い音を響かせた。
はっとしてドクオの方に視線を移すと、そこにはドクオ一人しかいなかった。
どうやったのか見落としたが、人影は川に落ちてもがいている。
('A`)「ね?だから夜道は一人で歩いちゃダメなんだよ」
言い終えるとドクオは元の酔っ払いに戻った。
続く 川 ゚ -゚) クーは異境の地で暮らすようですpart4



